おかざり(正月飾り)について
一関市内(いわい地方)で「おかざり」と呼ばれる正月飾りとしての伝承切紙は、岩手・宮城の各地で、「きりこ」「おへいそく」などのほかに、「お正月さん」とも呼ばれます。また、その用紙として東山の和紙が気仙沼等にも普及していました。これらの「おかざり」は、神棚やその周辺に貼ることが一般的であり、家に神棚が常設されるようになったことと密接な関係があるといわれています。
形状として「切り透かし形式」(神の依代や供物、吉祥柄の図柄を切り透かした平面的な形式)、「紙注連形式」(紙を折って複雑な切り込みを入れた立体的な形式のもの)、「幣束形式」(神々の依代、罪や汚れを祓うもの、供物など)などがあります。
このうち、「切り透かし形式」には、蕪・火・鯛・御幣・末広、開・運・福・禄・寿、商売繁盛・海老・宝船・恵比須・大年神・大神宮・お神酒・重餅、七福神、鶴亀・門松・稲、蒼前様などがあります。「紙注連形式」には、鯛、扇、米俵、宝船、恵比須などが表されています。「幣束形式」には、俵、大黒、田の神、枡、宇賀魂神、稲荷明神、水神、井戸神、蒼前、年神、山の神、船玉、火神、雷神、釜神、恵比須などがあります。これらは飾りとしての側面はあるにしても、本来的にも今日的にも、新しい歳を迎えるにあたっての信仰上の民俗文化です。しかし、地域の祭礼行事などと比べると、自由意志にまかされる個人の信仰や行事の分野は簡単に消滅してしまう傾向にあります。
また、一般に祓い幣と呼ばれる、片側にだけシデを垂らした御幣が神社から授与されて、家祓いの祭具とされますが、これなどは神霊の依ります形代とする以上に、特別な霊威の効果をそれに期待する心意が強くうかがわれる習俗です。信仰に裏づけられ、神迎えの依代でもある伝承切紙の諸相を明らかにし、後世にも伝え得るような対策が期待されるところです。
- 関連ページ→「神棚・正月飾り」
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