地鎮祭について
地鎮祭は、「とこしずめのまつり」と訓読みしますが、一般的には「じちんさい」と音読みします。伊勢の神宮では「鎮地祭(ちんちさい)」といい、民間では「地祭(じまつり)」ともいわれます。神殿や庁舎、校舎、一般住宅などの新築、土木事業の起工にあたり、その敷地の神をまつり、土地の平安堅固をお祈りします。
古くは、『日本書紀』の持統天皇五年(六九一)十月二十九日条に、「使者を遣はして新益京(あらましのみやこ)を鎮(いは)ひ祭らしむ」とあり、文献上の地鎮祭の初見とされています。「新益京」は藤原京のことです。
地鎮祭の祭神は、古くは『延喜式』神名帳所載の神祇官の座摩(いかすり)五柱神(生井神(いくいのかみ)、福井神(さくいのかみ)、綱長井神(つながいのかみ)、波比祇神(はひきのかみ)、阿須波神(あすはのかみ))がまつられ、伊勢の神宮の鎮地祭祝詞では「大宮地に坐す大神等」と奏上されます。今日、各地の多くの神社で行われる地鎮祭では神名を明らかにせず、「此の処を宇志波伎坐す神等」と祝詞で奏され、あるいはその所在の産土神と大地主神が祭られています。
地鎮祭の祭場は、区画された土地の中央に忌竹(葉のついた竹)四本を立て、注連縄を張りめぐらします。また祭場の中央に神籬(ひもろぎ)(榊に麻、紙垂をつけたもの)を立て、神様の依代とします。そこに神々をお招きし、神饌(米、酒、魚、野菜、果物、塩、水など)をお供えして祝詞を奏上し、工事の安全と守護をお祈りします。建築主や工事関係者は、略礼服やダークスーツを着て参列し、「奉献」と書いたお酒などをお供えするのが一般的です。
一般的な式次第は次の通りです。
一、修祓(しゆばつ)(祭場、参列者等を祓い清める儀)
一、降神(こうしん)(神々を神籬にお招きする儀)
一、献饌(けんせん)(神々に食事を奉る儀)
一、祝詞奏上(のりとそうじよう)(神職が建築主に代わり祈願詞を奏上する儀)
一、散供(さんく)(土地の神さまに供え物をする儀)
一、苅初(かりぞめ)・穿初(うがちぞめ)(工事開始の際、はじめて鎌、鍬を入れる儀)
一、鎮物(しずめもの)(土地の神々に御神宝となるものを埋納する儀)
一、玉串拝礼(たまぐしはいれい)(神職および参列者一同が、玉串をお供えして拝礼する儀)
一、撤饌(てつせん)(食事をおさげする儀)
一、昇神(しようしん)(お招きした神々をお送りする儀)
以上の神事に続いて、直会・祝宴があります。直会は、神々にお供えしたものをいただく行事で、一般に御神酒で乾杯します。
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