国や自治体と宗教行事
国や自治体が主体となり、公共工事を行う際の地鎮祭や、災害・事故などの犠牲者を追悼する慰霊祭を行うことは、それらが社会的儀礼の範囲であれば、政教分離違反ではありません。
昭和52年(1977)7月に出された「津地鎮祭訴訟」最高裁大法廷判決において、「行為の目的が宗教的意義をもち、その効果が宗教に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉等になる」か否かをもって、憲法20条3項にいう「宗教的活動」かどうかを判断するという基準(目的効果基準)が示されました。それに基づき、三重県津市が主催した地鎮祭が「社会の一般的慣習に従った儀礼を行うという専ら世俗的なもの」として合憲とされ、以後はこの判例が司法界で定着しています。
平成23年(2011)3月の東日本大震災発生当時、遺体の供養をめぐり自治体が政教分離を理由に、身元不明の遺骨に対し何の慰霊の営みも行わないのみでなく、遺体の安置所となった公共施設で僧侶などの宗教者に慰霊行為を一切行わせないことが報じられ、問題となりました。しかし国や自治体が宗教的慰霊や追悼行事に関わっても政教分離違反とはなりません。
平成5年(1993)10月8日に言い渡された「千葉県八街町仏式町民葬補助金訴訟」最高裁判決は、一町民が町長らを相手に補助金などの返還を求めた原告の主張を退けており、津地鎮祭訴訟最高裁判決の「目的効果基準」に基づいて合憲と判断しています。
大きな災害や戦争などの犠牲者、国や郷土に功績のあった人に対し、国や自治体が慰霊・追悼を行うのは世界共通の営みであり、宗教に対する援助、助長などにはなりません。
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