夫婦別姓問題について~家族の大切さを考える~
わが国の民法上の婚姻制度は、長期的で安定した夫婦と親子関係を築くことを目的とし、戸籍制度は「一戸籍一氏」制度となっています。
結婚すると夫婦のどちらかの姓(法律上は氏)を選んで共通の姓とし、子どもが生まれると子どもも同じ姓を名乗ります(民法七五〇条、七九〇条)。
夫婦別姓問題について
しかし 近年、夫婦がそれぞれ別の姓を名乗ること(夫婦別姓)を求める主張があります。
その理由は、第一に夫婦の一方が姓を変更するのは様々な手続きが必要で、仕事上の連続性がなくなるからだといいます。これは職場の慣行や労働法制などの見直しによって解決できる問題であり、現在は職場での旧姓使用は一般化し、住民票に旧姓を併記し、それを根拠に印鑑登録証明書、マイナンバーカード、運転免許証、パスポートでも旧姓の併記が可能となっています。
第二に、結婚により一方の家名が存続できなくなるという主張です。これは子どもが娘一人しかいない場合にみられますが、少子化の中で一時凌ぎの対策に過ぎず、むしろ娘の子(孫)を養子にして家名を継がせればよいと考えられます。
第三に、姓を変えることで自分が失われ、否定されたような気がするという意見があります。しかし日常的に旧姓を通称使用すれば、一定程度緩和されると思われます。
仮に夫婦別姓が導入されると、制度としてファミリーネームの廃止になり、氏は個人を表すものとなります。夫婦の間に生まれた子の姓をどうするのかという問題、妻や夫が別姓を希望し、同時に子どもの姓をどうするのかの問題が、各家庭で生じてしまいます。
よって、現行の夫婦同姓・親子同姓の意義を認め、ファミリーネームを維持しながら、仕事などでの不都合は旧姓の通称使用の拡充で緩和することが最も現実的な解決策ではないでしょうか。
家族の大切さを考える
平成二十九年(二〇一七)の世論調査では、夫婦は同姓を名乗る(通称使用を含む)という考えが五三・七パーセント、別姓導入賛成は四二・五パーセントと、同姓を考える人の方が多くなっています。また別姓は子どもにとって好ましくない影響があると思う人が六二・六パーセントと、子どもへの影響を心配する国民が多いのが現状です。
神社本庁では平成八年(一九九六)、「祖先祭祀の継承」「家族の役割」「わが国の文化伝統」を重視する観点から、夫婦別姓に反対するという基本見解を発表しました。夫婦別姓は必然的に親子別姓になり、家族の一体感を損ない、子どもの姓をめぐる争いの原因ともなり、ひいては家族の崩壊を招きかねません。
世界人権宣言をはじめ、世界各国の憲法では「家族の保護」をうたっています。
平成二十七年(二〇一五)に夫婦同姓を合憲と判決した最高裁大法廷では、「家族は社会の自然かつ基礎的な集団単位として捉えられ、氏(姓)には家族の呼称としての意義があり、その呼称を一つに定めることによる利益を享受しやすい」、「同一の氏(姓)を称することにより、家族という一つの集団を構成する一員であることを実感することに意義を見出す考えも理解できる」とし、子どもの最善の利益や一つの戸籍にファミリーネームが登録されていることに意味をもつ考え方が打ち出されています。
家族は温かい社会や個人を保護する和合の共同体であり、家族という基礎単位の中で個人は人格や情緒を育み、様々な文化が伝承されます。行きすぎた個人主義や権利概念によって、家族や社会が弱体化することがないよう、夫婦別姓問題には慎重であるべきです。
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